「旅は人に生きる喜びをあたえるものです」
1994年12月、某大手旅行会社から中小旅行社3社4営業所で、大使館への査証申請からカウンター業務、国内外の手配・添乗・営業と旅行業務に携わり、大手旅行社勤務時代の友人と共に3名で会社を設立しました。
91年1月開戦の湾岸戦争からバブルも崩壊。その影響はじわりとやってきました。長いお付き合いのお客様の会社の倒産、社員旅行の中止、同業旅行社の大型倒産等、旅行業界にも不景気の風が吹き始めました。とはいえ、当時努めていた会社は社長が本業として、他にも事業展開をしており、けっして社員の解雇も減給もしないと頑張ってくださっていました。ですが、仕事は減少する一方、社会の自粛ムードにすっかり巻き込まれていました。
仕事が減っても、給与をもらえる。となると人は働かなくなるものです。私は本当に社長に申し訳なく思ってました。そして、ふと社長が気がわりして、会社がなくなったら?そう思ったとき、まわりを見渡すと同僚はみんな不動産をもっていたり家業があったり・・・
もしかして、私だけなんにもない?なにより、仕事がなくても給与がもらえる状況に居心地がわるかったのです。好きな事を自由にさせてくれる気風で大好きな会社でしたから他に転職するなど考えもつかず、だったら自分で頑張ってみよう。
まさに最悪の時代に創業することになったのです。
おもいつき起業の私になんと賛同者があらわれ、前述の3人で設立することになったわけですが、3人揃って3度の飯より旅行の仕事が大好き。
ひとりは、自分で日本全国47都道府県をくまなく歩き回り、お客様の手配を完璧に仕上げることが楽しくてしょうがない職人気質。ひとりは、フットワークの軽さと、好奇心と探求心のかたまりで、どこでもだれのところでも訪ねて行って仕事を創る営業の達人。ひとりは、何より人との出会いや笑顔が大好き、添乗にでれば別人、おもしろ企画を考えるのが大好きな変人。
会社設立の当時に書き溜めた「創業ノート」は、今読み返してみるとよくもまあ、こんなことをしてきたものだと懐かしく思うことばかりです。
それは、会社の方向性をきめるために必要な時間でした。旅の作り方も、営業のスタイルもちがう3人がそれぞれの思いをぶつけ、会社が、未来が、旅行業はどうあるべきかと話しました。設立当初は実はすこしお堅い名前の会社でしたので、普段は商号の通称名をつかっていました。登記簿上の社名では旅行会社を想像させる文字はなく、何屋なのかわからない名前です。
私たちは旅行業の世界が広がる可能性を信じていたからです。
旅行はツールのひとつに過ぎず、このツールをつかって、いろんな可能性がひろがるよね。
当時社内には、「脱・旅行業」と書かれた社是がかかげられていました。旅行の枠をこえてさまざまな提案をしたい。いろんなビジネススタイルを考えて挑戦してきました。
例えば、いまではすっかり当たり前になりましたが、プレゼンテーション型の旅行提案。
大きなお仕事には合い見積もりはつきものですが、(当社では基本的に料金競争の相見積もりはお受けしておりません。)当時苦労して練った企画の意図をお客様に理解いただくには?ただ日程表だけではとてもプランの良さを解ってもらえないと判断し、こちらからプレゼンテーションの機会をいただけないかとお願いしました。
旅行業ではあの当時、前代未聞だったと思います。お客様も当初プレゼンの意味が理解できなかったようでしたが、見積もり相手社もでそろい、私たちが時間をかけて、練りに練った企画の意図をしっかりとお伝えさせていただきました。
予算ありきでも料金競争ではなく、企画で勝負したい。それは今もかわらぬ私たちの思いです。
【Travel Gives Life】は、ゲーテの詩の一節です。
この詩との出会いは、「旅は人を幸せにする。旅にはそういう力がある。感動がなけりゃだめなんだ。」と熱く語り、日本初のチャータービジネスを成功させ、そしてまた、まだまだ顧客のすくなかったグアム島の観光開発から業界史にのこる幻のツアー「地球人学校」の創設など、旅行業界の不可能を可能に、あたらしい市場の開拓や旅行産業の社会的地位の向上などにつとめられた大先輩、旅行産業経営塾塾長:山田学氏から伝えていただいた大切な思いです。
人を幸せに、生きる喜びを感じていただける旅をお届けすること、すべての原点がそこにあります。そのために必要な事をすべて関わって繋いでいきたいと思うのです。 振り返ると、設立当初からそんな話をまじめに語り合ってきました。
大きく変えました。
私たちが時間をかけて現地を歩き、経験をつみかさねて自分の足であつめた情報は、簡単にだれでも手にいれられようになりました。団体ツアーでは、今日はどんな宿だろうかと心まちにし、ホテルに到着すると挙がった歓声は、いまはもうありません。すでに下調べがネットで終了しているからです。
仲居さんのお茶入れのサービスに、ネットにかかれているのと違うとクレームになる時代になりました。
今日、入社したばかりの新人さんがカウンターでお客様の対応をしても、ネットから配信される情報に、今日から私もプロ!になれる時代なのです。家にいながらにして、世界旅行が楽しめる。PCの画面をみながら、飛行機の予約もホテルの予約も可能。旅の素材は、スーパーでのお買い物のように、ぽんと籠にいれておしまい。こういう素材提供のサイトを運営している会社さんは、流通系旅行業といわれ増加していき、これまでのようなリアル店舗が減る傾向にあります。
そんな中。時代に逆境しているようですが、私たちはやっぱり自分で歩いて得た情報、そして自分達のネットワークからの情報、それが一番だと思っています。
お客様はアドバイスもないなら自分で情報仕入れればいいやと、またまた旅行会社からはなれていく悪循環を産んでいるのです。
②一生勉強。自分で歩いて学び情報収集しスタッフで共有しお客様に提供する
③他の業種・産業との連携、コラボレーションであらたな旅をご提案する
④旅のしあげ、あくまで添乗業務にこだわる
⑤旅を創る、宿泊・飲食・移動、すべての業種と共通の思いでお客様に提供する
常にあたらしいことに、チャレンジしていく会社です。
旅行という枠におさまっていられません。お客様の生きる希望をお届けし幸せな笑顔をみせていただくために・・・